わざと手を抜くビジネスモデル

「全力をあげて完璧を期しても評価されないのに、手抜きをすると評価される」

そういうことが実際にあるという話をします。

 

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ケーキミックスがアメリカで初めて販売されたのは第2次世界大戦のころ、つまり1940年代です。

 

ケーキミックスに水を加えて焼くだけでケーキが出来てしまうという画期的な商品でしたが、発売当初はほとんど人気がありませんでした。

パイを作るための粉やスコーンを作るための粉はかなり売れていたので、ケーキミックスだってよく売れるだろうと見込んで発売されましたが、実際にはさっぱり売れなかったとのことです。

 

そこである心理学者が、意図的にケーキミックスから乾燥タマゴを取り除いて販売することをメーカーに提案しました。

すなわち、あえて不完全な商品とし、タマゴを加えるという「手間」をわざわざ掛けなければならないようにしたのです。

 

すると、この不完全なケーキミックスは、爆発的に売れました。

ちょっとだけ手間がかかるという点が主婦層の

「面倒なのは嫌だけど 簡単すぎるのも嫌だ」

「そこそこ手作り感を出したい」

という相反する心を惹きつけたわけです。

 

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上記はケーキミックスという「商品」の話ですが、似たようなことを「ビジネスモデル」の事例に見ることができます。

「わざと手を抜く、未完成のビジネスモデルが、かえって重宝される」

という場合があるのです。

 

meal preparation(ミール・プリパレーション)

ないしは

meal assembly kitchen(ミール・アセンブリー・キッチン)

と呼ばれるビジネスモデルがアメリカにはあります。

 

このビジネスモデルはすでに生活に定着したのか、最近はあまり話題になることがなくなりましたが、15年ほど前に登場したころはよくメディアに取り上げられていました。

 

どのようなビジネスモデルかというと、

  1. 仕事を終えたお母さんが会社の帰りに料理教室に立ち寄る
  2. 参加者みんなで料理を作る
  3. できあがった料理を自宅に持ち帰り家族の夕食として出す

というものです。

 

「とても忙しくて手の込んだ料理ができないけれど、かといって大切な子どもたちに外食ばかりさせたくないし、デパートの総菜やコンビニの弁当で済ませてしまうのも申訳ない。できることなら手作りのものを食べさせたい」

そんなワーキングマザーの切ない気持に寄り添うビジネスモデルです。

 

では、これのどこが「手抜き」なのかというと、

「仕事帰りのお母さんが料理教室に立ち寄るときじつは料理の大部分は料理教室のほうであらかじめ仕込んであり、お母さんは最後のひと手間をかけるだけでよい」

ここが手抜きポイントになっています。

 

その手抜き具合が市場から共感されたため、米国民の生活に定着するビジネスモデルとなりました。


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